4 イギリス留学は奇跡の連続だった

憧れて憧れてようやくかなったイギリス留学。
何もかもが新しいことづくめだった。
聞こえてくるのは英語、目に飛び込んでくるのはレンガ造りの建物、口にするのはパンやじゃがいもがメイン。

特に自分の気持ちや要望を英語で伝えることが難しく、ストレスに押しつぶされそうだった。講義を録音して何度も聞き、辞書を引きながら課題のテキストを読む毎日。
イギリスに渡った最初の1年間は、慣れない生活と言葉の壁で苦労した。

摂食障害が止まった

しかし、驚くことが起きた。
あれほど止められなかった摂食障害が、イギリスの地を踏んでから、ピタリと止んだのだ。食べるヒマがないほど忙しかったというのもあるが、あれほど毎日あった異常な食欲が全く起きないことに驚いた(イギリスに渡ってこれまで1度も食べて吐いたことはない)。

この時ようやく、自分が摂食障害だったのではないかと疑った。そして、摂食障害が止まらなかったのは、自分を抑圧しながら生きていたということにに、気がついたのだ。
自分のことをよく理解せず、憎み、本当にしたいことから目を背けていた。それが食べて吐くという行為として現れていたのだと思う。

そう考えると、イギリスの大学に入学したことは、私にとって間違いではなかったといえるだろう。

勉強が面白くて仕方ない

大学生活2年目を過ぎた頃から、以前よりも勉強がしやすくなった。
以前よりも英語を聞き取りやすくなったし、辞書を引く回数も減った。
友人と呼べる人たちも増えて、少しずつだが学生生活を満喫できる余裕ができたように思う。

しかし、何よりも嬉しかったのが勉強することの喜びだ。
大学では社会学と国際政治学を専攻したが、これが自分の興味にちょうどフィットしたのだ。特に政治理論と社会理論が面白かった。

私の性格は、超が付くほど真面目だ。しかし、この真面目さが嫌いで、学生の頃はわざと遊びに夢中になっていたような気がする。その真面目さが、大学の勉強では役に立った。時々友人と息抜きに遊びにでかけることはあったが、それ以外は大学と寮を往復する地味な日が続く。それでも、机にかじりついて勉強することにこれまでにない幸せを感じ、コツコツ取り組むことができたのは、真面目さがなかったら難しいだろう。

こうして4年が過ぎた。
私はFirst degree honorを手にして大学を卒業した。

これも、奇跡だったとしかいいようがない。
入学時は、英語のレベルもそこそこで、とりあえず卒業できればいいと思っていた。
それが、勉強を続けていうちに、成績が伸びて上を目指したいと望むまでになったのだ。

卒業式には、父と母も駆けつけてくれ、最高の日を過ごすことができた。私も両親も終始笑顔で、私は「究極の幸せを感じる気持ち」をずっと感じ続けていた。
イギリス留学は、これまで生きてきて、一番幸せだった日々だったと自信を持って言える。

イギリスに留学するという選択は、今も後悔していない。
むしろ、この選択をしたことによって、私は生かされたと思っている。